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2016年版11月17日は将棋の日。由来やコンピュータ将棋の歴史的な大逆転劇について紹介

公開日: : はやりもの


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こんにちは、ヒロです。

11月17日は将棋の日です。由来やコンピュータ将棋の歴史的な大逆転劇を紹介


将棋の日

日本将棋連盟が1975(昭和50)年に制定。
江戸時代、将棋好きの8代将軍徳川吉宗が、この日を「お城将棋の日」とし、年に1回の御前対局を制度化した。
日本将棋連盟
[Wikipedia]wikipedia – 将棋の日


コンピュータ将棋の現在

コンピュータ、将棋、と聞けば「第2回 将棋電王戦」を思い出す方も多いはず。将棋のプロ棋士とコンピュータによる5対5の団体戦が行われ、その結果はコンピュータ側が3勝1敗1分で勝ち越し。この結末はさまざまなメディアで取り上げられ、大きな話題になった。

プロ棋士にも勝つほどの恐ろしい強さになったプログラムが集まり、世界一の座を争うのがこの選手権である。人間同士の対局とは一味違った魅力を持つコンピュータ将棋、その最高峰の戦いの模様をお伝えしよう。

知のF1! 超スピードの世界


コンピュータ将棋は強い! と言われているが、そもそもコンピュータ将棋とはどんなものなのか。まずはイメージをつかむために、たとえ話で輪郭を描いてみたい。

コンピュータ将棋は、将棋の手を決める思考部分(ソフトウェア)と、プログラムを動かすマシン(ハードウェア)に分かれるが、これを車にたとえてみよう。すると将棋は「ゴールが設定されたコース」というところ。ここに2つの車が走る。相手よりも早くゴールに着けば勝ちとすると、当然車(ハードウェア)は速く走れるほうがよい。ところが将棋というコースはとても広大かつ複雑なので、やみくもに動いたのではゴールにたどり着く可能性は低い。効率よくゴールを目指すためには、優秀なドライバー(ソフトウェア)が必要である。

つまり、コンピュータ将棋の強さを競うということは、車の性能を上げ、より優秀なドライバーを育てることにほかならない(――これは実はちょっと乱暴な比喩なのだが、おおよそのイメージということで、細かいところには目をつぶっていただければと思う)。さて、現在のトップクラスのコンピュータ将棋はどれくらいの速さ(で手を読む)かだが、だいたい、1秒間に300万局面以上といったところだ。これはあなたの想像通り、とても速い。車は車でもF1マシンである。

では、電王戦で話題になった「GPS将棋」はどうか。この「車」、とても速いそうだ。今回の選手権ではなんと1秒間に3億局面を超えることもあるという。……たぶん空を飛んだりする車なのだろう。

科学技術の進歩によってコンピュータの性能はどんどん上がっている。手を読む速さは、ケタがいくつか落ちたところで人間にはとうてい追いつかない(もっとも、人間は「不要な手は読まない」というコンピュータとは異なるアプローチをしているので、単純に優劣がつくわけではない。実際にコンピュータが軽く人間を凌駕しているのかといえばそんなことは全然なく、読める先は数十手で「いい勝負」というのが実情だ)。

この「数の暴力」で将棋を指すとどうなるか。人間の感覚では切り捨ててしまうような手が飛び出し、型破りなパフォーマンスが現れる。さらに選手権の一局にかかる時間は最長50分と短く(プロ同士の対局は朝から晩まで続くことはザラにある)、ぐっと密度が高くなる。そこから生まれる迫力、スピード感は、まさに F1レースと言えるものになっているのだ。

そしていよいよ「世界コンピュータ将棋選手権」の当日を迎える。

(2)一次予選――年に一度の祭典の始まり

一次予選――年に一度の祭典の始まり

コンピュータ将棋選手権は1日目に一次予選、2日目に二次予選を行い、最終的に予選を勝ち抜いた8チームが3日目の決勝に進む。なお、前年に好成績を収めたチームには二次予選シードが与えられている。


対局会場を出てすぐ外に積まれた段ボールの山。パソコン本体やモニタなど、大事な機材が入っている
今年の会場は早稲田大学にある国際会議場。建物の中に入り対局会場ヘ向かうと、部屋の外、窓際にたくさんの段ボールが置かれていてちょっと驚く。シード組は二次予選からの出場だが、準備は一次予選終了後に行うので、全40チーム分の機材がすでに搬入されていたのだった。

いよいよ対局会場に入る。まず目に入るのは林立するタワー型のパソコン。そして会場前方のスクリーンには、進行中の対局から4局が選ばれて映し出されていた。会場には日本将棋連盟理事の北島忠雄六段、コンピュータ将棋に詳しい古作登氏と篠田正人氏の姿もあった。


対局会場の様子。前方のスクリーンには進行中の対局から4局が選ばれて映し出される
一次予選の対局を観戦する北島忠雄六段(中央)。左は「柿木将棋」の柿木義一氏、右はアマ強豪の古作登氏
選手権の対局ルールは持ち時間各25分で、それを使い切ったら負けというもの。経験の少ないチームにとっては、勝ち負けはともかく一局を無事に終えられるかがひとつの山になる。プログラムがしっかり動作せず、途中で時間切れになってしまった対局もいくつか見られた。

プロ棋士を破るトップレベルのプログラムがある一方で、一局を全うするのに苦労するプログラムもある。なんだか微笑ましくもある……が、あのGPS将棋だって参加当初は目も当てられないような将棋を指していたのだ。


図1 2003年、第13回一次予選6回戦▲GPS 将棋-△椿原将棋戦より。敵の本陣へ向けて「討ち取られたら負け」の大将が先陣を切って突撃。当然勝てるわけがない。 GPS将棋が自由奔放だった頃の貴重な棋譜である
今でこそ「コンピュータは強い」というイメージがあるが、かつてのコンピュータはひどく弱かったものだ。コンピュータ将棋の開発は1974年に始まっているが、今のような強さの土台ができたのは、 2006年に「Bonanza(ボナンザ)」が登場してからのことだった。

Bonanzaイノベーション

Bonanzaは保木邦仁氏が開発したプログラムで、コンピュータ将棋を語るうえでは外せない存在だ。2006年の選手権初出場で優勝をさらっていったのだが、このときBonanzaはノートパソコン+小さな扇風機という質素な環境で動いていた。ほかの開発者からすれば、「F1マシンに乗ってスタートを待っていたら一般車がやって来た。そいつが優勝した」くらいの衝撃があったのではないだろうか。

将棋の強さを支える要素には大きく分けて「読み」と「大局観」の2つがあり、コンピュータ将棋でこの2つに相当するのが「探索」と「評価関数」である。そしてBonanzaはそれぞれの分野で「全幅探索」と「Bonanzaメソッド」という手法を提示した。

全幅探索はその名の通りあらゆる手を読む手法で、 Bonanza以前は「将棋では可能な手が多すぎ、有効に機能しない」と思われていたものだ。だが不要な手を読まない工夫を添えることで、じゅうぶん実用に耐えるものであるとわかった。→コンピュータの計算能力を生かしてガーッと読もう!(力ずく)

もうひとつのBonanzaメソッドとは、コンピュータの大局観にあたる評価関数を機械学習によって調整する手法のこと。プロ棋士の棋譜を手本にして同じ手が指せるように、5000万個の評価項目の値を自動で調整した。この成果は非常に大きく、評価関数は人間の大局観にぐっと近いものになった。→コンピュータにガーッと調整させよう!(これも力ずく)

現在Bonanzaはライブラリ(=プログラムの部品)として誰でも使うことができる。今年の一次予選を通過した8つのプログラムのうち、実に半数の4つでBonanzaライブラリが使われていた。なんという影響力!

(3)二次予選――決勝への門は狭くなったか

「なのは、いきまーす!」でおなじみの選手権名物プログラム、その名も「なのは」。痛PCだけど前回二次予選10位の実力派です
二次予選――決勝への門は狭くなったか

2日目の二次予選からはいよいよシード組が登場する。一次予選をくぐり抜けたプログラムの前に立ちはだかるのは、優勝候補の呼び声高い有名なプログラムだ。少年誌も真っ青のパワーインフレである。

二次予選の目的は上位8位に入ることで、このときの順位は決勝ではほとんど影響しない。そのため「本番は決勝、二次予選は前哨戦」という見方があるが、最近では強いプログラムがぽこぽこと雨後の竹の子のごとく出てくるため、トップランカーといえど安心はできなくなった。衝撃の大きかった出来事として、昨年はBonanazaが二次予選で敗退している。

開発者に話を聞いてまわると、決勝進出を目標に掲げるところが多かった。そこに謙遜している様子はまったくないのである。

群雄割拠、個性豊かなプログラム

毎年優勝を争うクラスのプログラムがぶつかるだけに、将棋のレベルは非常に高い。またコンピュータ特有の過激さも相まって、観戦していて飽きることがなかった。

たとえば下の図。手前の GPS将棋がどう攻めるかという局面だが、自玉も危険な形で駒はできれば渡したくない。ところがここで「一番渡したくない駒」である飛車を渡しながら後手玉に迫ったのである。人間にとっては直感的に選びにくい手も、読み切っているから問題ない、というコンピュータらしい決め方だった。


図2 二次予選▲GPS将棋△激指戦より。先手は金に迫られ、特にヨコに利く駒を渡すと危険な形。ところがGPS将棋は飛車をばっさり! 渡した飛車を王手で打たれても一手勝ちできると読み切っている。人間では怖くて本能的に避けてしまう順だ
今年の二次予選は特に波乱もなく、実力上位と目されるプログラムが決勝に進出した。ここからはその8つを紹介していこう。

激指(げきさし):現行制度での優勝は4回と最多。実現確率探索という手法を取り入れ、人間らしいバランスのとれた指し回しが特徴。投了のタイミングにも美学を感じさせる


激指チームの鶴岡慶雅氏(右)、横山大作氏
「びっぷる」とponanzaの開発者、山本一成氏。ponanzaはBIGLOBEのクラウドサービスを使っている
ponanza(ポナンザ):前回4位、 Bonanzaをリスペクトした名前だが実際紛らわしい。評価関数の精度を頼みに、序盤でリードを築いて押し切る展開を得意にしている

GPS将棋:前回の優勝プログラム。電王戦ではA級棋士の三浦弘行八段を破って注目を集めた。東京大学駒場キャンパスのパソコンを使った大規模クラスタによって、冒頭でも紹介したように圧倒的なスペックを得ている。堅い守りを盾に、一見無理と思えるような細い攻めをねじ込む棋風。結果的に「一方的に殴って勝つ」が得意のスタイルである

Bonanza:前頁でも紹介したコンピュータ将棋界の革命児。以前は超攻撃的な棋風で「ボナンザ攻め」は無理攻めの代名詞になった。バージョンを重ねるごとに棋風が変化し、現行のものでは腰を落としてじわじわと戦線を押し上げるスタイルをとっている

ツツカナ:前回3位、名前の由来は時計の部品から。手を読む深さを学習によって決めている点が特徴。現代将棋の流れが穴熊至上主義にあるなか、穴熊を好まないという奥ゆかしい性質を持つ

NineDayFever(ナインデイフィーバー): Bonanzaの評価関数を、評価値の矛盾を解消する方向で改良。ベースはあくまでBonanzaであるため、1年半という比較的短い期間で成果を出すことに成功した。初出場ながら決勝進出を果たし「台風の目か」と騒がれたらしいが、実は事前に別所でその強さが確認されていた期待の大型新人


「YSS」の開発者、山下宏氏
「習甦」の開発者、竹内章氏
習甦(しゅうそ):前回5位。評価関数に重点を置いており、人間を超える大局観を目標に掲げる。序中盤の安定感だけでなく終盤の鋭さにも定評がある。名前には「羽生善治三冠から白星を積み上げたい」という思いが込められている

YSS:優勝3回、1991年の第2回から参加を続けている古豪中の古豪。今回は積極的に新しい手法を取り入れて強化に成功した

なお、前回2位、第1回電王戦で米長邦雄永世棋聖を破った「ボンクラーズ」の後継である Puella α(プエラ アルファ)は残念ながら不出場だった。

そしてやって来た3日目の決勝。8つのプログラムによる戦いの結末は……。


3日目の決勝では一般の来場者向けに、 1階ホールで解説会が行われた。勝又清和六段と永瀬拓矢五段が交代で解説し、竹部さゆり女流三段と渡辺弥生女流1級が聞き手を務める。会場には多くの来場者が詰めかけ、パソコンを持ち込んで中継を見ながら解説に耳を傾ける熱心なファンの姿もあった。


コンピュータ将棋に造詣が深い勝又清和六段。わかりやすい解説につい聞き入ってしまう
解説会の様子。多くのファンが足を運んでいた。中にはノートパソコンで中継を見ながら解説に耳を傾ける猛者の姿も

解説中の永瀬拓矢五段。「思いつかない手がたくさん出てきて勉強になります」
女流棋士の竹部さゆり女流三段、渡辺弥生女流1級が開発メンバーの「メカ女子将棋部」。女子力では他チームを寄せつけなかった
決勝は予選と違い総当たりのリーグ戦だが、ひとつひとつの対局が一発勝負であることに変わりはない。会場で聞いて印象に残ったのが「いい目が出てほしい」という言葉だ。勝敗は強さで決まるから、運は関係ないのではないか……という考えが頭をもたげる。

コンピュータ将棋では、強さを確認するためには何十回、何百回と勝負を繰り返してデータをとる。相手より強いかどうかは、一回の勝負ではなく、勝率によって測られているのである。開発者はこの勝率を上げるために全身全霊をかけて努力し、選手権という成果の発表の場に臨んでいる。

ところが本番は一発勝負。たとえ勝率では分がよくても、一回の試行ではどう転ぶかわからない。祈る気持ちになるのもうなずけるというものだ。対局中にモニタを見つめる開発者たちの表情はどこかこわばっている。まるで子を見守る親のようだ、と思った。


ponanza優勝のために習甦を応援する山本一成氏(左)と、習甦の開発者、竹内章氏
さて、決勝の進行は上位陣と下位陣で星が分かれ、優勝争いは激指、 ponanza、GPS将棋、Bonanzaの4つのプログラムに絞られていた。最終7回戦を残しての成績は次の通り。

【5勝1敗】GPS将棋
【4勝2敗】激指、 ponanza、Bonanza
【3勝3敗】NineDayFever
【2勝4敗】ツツカナ、習甦
【0勝6敗】YSS

7回戦の組み合わせはGPS将棋-Bonanza、激指-ponanza 、NineDayFever-ツツカナ、習甦-YSS。

唯一1敗のGPS将棋は引き分け以上で優勝が決定する。そのGPS将棋と直接対決のBonanzaも最終戦に勝てば、同じ5勝2敗で並ぶものの「勝った相手の勝ち星の数」の差で GPS将棋を抜くことになる。ただし残る3局が「ponanza勝ち かつツツカナ勝ち かつ習甦勝ち」という場合に限り、ponanzaがGPS将棋を破ったBonanzaを抜いて優勝となる。激指は勝った相手が悪く、最終戦を勝ったとしても優勝の可能性は消えていた。

大一番の▲Bonanza△GPS将棋戦は、GPS将棋が一方的に角を成り早々にリードを奪うことに成功する。対するBonanzaは玉を戦場からできる限り遠ざけ、守りを固める作戦に出た。


図3 ▲Bonanza△GPS将棋戦。自分だけ角を成って後手大有利の図である。するとBonanzaはじっと辛抱。「穴熊」と呼ばれる囲いに潜って反撃の機会をうかがった
苦しい状況でも、玉をしっかり守っていれば逆転のチャンスは生まれやすい。これは「作戦負けには穴熊」という言葉で、プロ同士の対局でも現れる考え方である。しかし図のような「相矢倉」の戦いでは、見返りなく大駒(飛と角)を成らせてはいけない、というのがとても大事な常識。それを破ったこの状況は、サッカーでいえば前半からいきなり2点差をつけられているようなもので、この差は容易には埋まらない。Bonanzaは徹底抗戦して粘るものの、GPS将棋は一歩ずつ確実に勝利へと近づいていく。他の対局では ponanza、ツツカナが勝ったが習甦が敗れたことで、 ponanzaの優勝はなくなり、この直接対決が優勝決定戦になっていた。


図4「目から火の出る王手飛車」。 Bonanza、どうしようもない。セコンドがいればとっくにタオルを投げている
きれいに王手飛車までかけられた。打つ手がないことは明らかだ。それでも、 Bonanzaは絶望的な戦いを続ける。後手(GPS将棋側)にとって唯一の不安は、相手よりも多く時間を使っていること。だが、この調子ならトドメを刺すまでには十分な時間が残っている。誰もが思っていたはずだ。あとは終局まで粛々と儀式のように手が進むだけだ、と――。 しかし事件は、突然起きた。


(5)コンピュータ、秒に追われて誤る

Bonanzaが粘り続けて差した一筋の光明。「ある予感」が会場に広がっていく
優勝目前のGPS将棋。しかし異変が……?
コンピュータ、秒に追われて誤る

会場がざわめく。GPS将棋が王手をかけたのだ。


図5 王手をかけなくても勝ちだが、あえて王手をかけた。詰みを読み切っている
図5は平凡に攻めて勝ち、という局面である。そこで王手をかけたということは、GPS将棋が詰みを発見したからにほかならない。いよいよ終局か、GPS将棋2連覇、やはり800台超のクラスタは強かった……。そんなことをぼんやりと考えていたが、会場の空気が変わったことに気づくまでに、そう時間はかからなかった。


図6 なぜ!? GPS将棋、痛恨の失着
なんと、GPS将棋がBonanzaの玉を詰まし損ねたのである。スクリーンには王手をしのいだBonanzaが、逆にGPS将棋の玉に王手をかけている局面が映し出されていた。Bonanzaはまるで人間が時間勝ちを狙うときのように、王手ラッシュを繰り出していく。王手がなければ何かを1秒指しである。対してGPS将棋は時間を使いがちで、みるみるうちに持ち時間が減っていく。盤上はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図。会場のどよめきも収まらない。

そして、ついにGPS将棋の時間が尽きた。運営側によって対局結果が確認され、Bonanzaの勝ちが判明する。開発者の保木さんが顔を覆う。時間切迫によりコンピュータが誤った末の時間切れ、大逆転という劇的な幕切れ。Bonanzaは2006年の初出場以来、7年ぶり2回目の優勝を勝ち取った。


Bonanza-GPS将棋戦が終局。興奮冷めやらぬ会場で、結果を配布してまわる瀧澤会長
優勝決定戦は、GPS将棋の時間切れによるまさかの幕切れ。Bonanzaが大逆転で7年ぶりの優勝を勝ち取った
保木氏は取材のインタビューに答え、最後の勝利について「まだ信じられないです」とコメント。次回の電王戦への意欲について尋ねられると、「どのプログラムもみんな強いので、特にBonanzaを、という気持ちはありません。ただ、機会が与えられるなら、とてもうれしいことです。ぜひお願いしたいです」と答えた。


取材を受ける保木邦仁氏
GPS将棋に何が起こったのか?

勝勢の終盤戦から詰ましにいって誤り、まさかの転落。いったい、GPS将棋に何が起きていたのか。開発チームの金子知適氏に話を聞いた。

GPS将棋が詰みを見つけたことは事実だった。GPS将棋が決勝で使っていた803台のうち、3台は詰み探索専用のマシンである。これはあらゆる局面で詰みを探し(当然多くの場合は「詰みなし」だが)、詰みありとわかれば最初の1手を司令塔となるコンピュータに伝える、というものだ。

今回は図5の叩きが「詰みあり」と判断した結果の手だったのである。そしてこの詰み探索専用のマシンは、相手によって王手が解消されると、再び詰みを探し始める。非効率なようだが、詰みありと判明した局面プラス正しい初手からスタートするのだから、必ず詰みが見つかる。これを繰り返すうちに相手玉は詰むわけだ。

しかし、ここに落とし穴があった。最初の王手から進んだ局面で詰みを探したとき、すぐに答えが出なかったのだ。時間切迫によって着手を急いでいた司令塔は、詰み探索専用マシンの意見が出るより先に、通常探索マシンの意見を採用した。この結果、図6で銀の打ち場所を誤ったのである。

今年の選手権の結果は、優勝から順にBonanza(5勝2敗)、ponanza(5勝2敗)、GPS将棋(5勝2敗)、激指(4勝3敗)、NineDayFever(3勝4敗)、ツツカナ(3勝4敗)、習甦(2勝5敗)、YSS(1勝6敗)となった。昨年は上位に入賞できなかったBonanzaや激指といった実力者が、きっちり存在感を示したと言えるだろう。

実はBonanza、7年前の優勝の際も、決勝で対戦相手の激指が詰みを逃すハプニングに助けられている。勝つには運を味方につけることも必要。勝負は最後の最後まで何が起こるかわからない。だからあきらめてはいけない。コンピュータからこうした人間くさい教訓が得られるのだから、なんとも不思議な世界である。

これからもコンピュータ将棋が強くなっていくことは間違いない。私たちはより多くのいい将棋を見ることができるだろう。次はどんなドラマが生まれるのか、今から来年以降が楽しみでならない。




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